めふぁにっき

すべての独身が自由に楽しく生きられる世界のために

それ以上可能性を感じてはいけない

 

 

めふぁにっきです。

 

今から4年ほど前、2015年の話。

人気コスプレイヤーTwitterで「私でシコるのは構わないけど私との可能性は感じないでほしい」と呟いて話題になった。この投稿はコスプレイヤーとしての偶像に対して劣情を覚えるのは問題ない、とはっきり言い切った点と、後半「私との可能性は感じないでほしい」という婉曲ながら強い拒絶を示した点で衝撃的だった。

 

「可能性」とは要するにコスプレイヤーとしての人格ではなく、本人と異性関係として交際に至る潜在的な可能性のことである。「ファン」と「表現者」というクリーンな関係性ではなく、それ以上の関係性に至りたいという願望を抱く男性ファンが存在してしまうのは善悪の判断はさておき自然なことだ。反対に、表現者側であるコスプレイヤーの中に、性的魅力の高さや潜在的なパートナーとしての魅力を強みにして異性のファンを集客している人たちがいるのも確かだ。

純粋な表現者なのか、商業的な地下アイドルなのか、いわゆる「裏垢」なのか、それぞれの個人やアカウントによってどれくらい露出するかといったスタンスの違いはあるだろうが、それらの間に引かれた境界線は曖昧になっている。性的魅力を取扱う界隈には常にトラブルが絶えることがない。

 

表現者側の立場としては、「迷惑な言い寄りをかけてくる」異性はファンとしての境界をわきまえない厄介客であり、「ファンとしての線を越えて個人としての可能性を感じる」ことがその原因だからそれはやめてほしいと考えるのもそう想像に難くない。

 

表現者としての論法はものすごく強いものである。

「自分は異性に対するアピールではなく、自分自身の表現として行っている」という大前提があるし、上に書いたように『性的魅力の下駄を履いて人気を集めている』というような書き方をすればすぐさま性差別の論理に持ち込まれて叩かれる。

だがあえて書けば、どだい「私の表現に性的魅力を感じてください、でも私の個人的人格に潜在的パートナーとしての魅力は感じないでください」とファンの内面に対して命令するのはちょっと無理な話というか、少しムシが良すぎる話だと思うのだ。

政治的に公正な世界がどれほど進もうと、人間にとって性的な魅力と潜在的なパートナーとしての魅力は生理的に分かちがたく結びついている。

アイドル業界もそうだが、(男女にかかわらず)性別の魅力を取り扱う業界ではそのことを口にはしないがよく理解している。

それゆえに顧客と表現者間にはクリーンな関係性でやっていきましょうという暗黙の了解があり、表現者側は表向きには「恋愛という選択肢を封じています、私は分を守ってくれるファンのため表現に徹します」という建前を守り、顧客は代わりにファンとしての分を守る。顧客は、表現者に対して擬似的ではなく本当の恋愛感情を持ち、それを行動に移すことを自ら禁じるのである。

 

先のコスプレイヤーはそのような暗黙の制約の下にはなかっただろう。

「熱心な顧客にはなってほしいが、異性獲得に積極的な側面はこちらに向けないでほしい」

潜在的パートナーとしてはアウトオブ眼中なので、こっちを見ることさえやめてほしい」

1個人の要求としては至極もっともだが、それを言ったらビジネスとしてのタテマエは全部おしまいになるある種の「お約束」を先のコスプレイヤーは破ってしまったのだ。

そもそもそんな「お約束」自体してはいないので破るもへったくれもないのだが、性別としての魅力を媒介とする表現者の、「業」というか本質がこの1件ですっかり浮き彫りになってしまった。

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▲タバスコとティラミス

 

話はだいぶ飛ぶが、一般人としての私たちはどこまで異性に「可能性を感じたらいけない」のだろう。

 

「可能性を感じる」前に、目の前にいる人間の性的嗜好がそもそもヘテロかどうか、決まったパートナーがいるか、そもそも自分は誰かに想いを伝えたら嘔吐とかされないか、いろいろ考えなくてはならない。

考えないで行動してから判断すればいいともよく聞くが、「可能性を感じられたら不快だ」とはっきり表明される時代である。挙げ句DMやらラインやら晒されて知らないところでクソ呼ばわりされる時代である。

 

大学の時、男の子が女の子に告白したら、後日女の子が「あいつに告白されてショックすぎてガチ泣きしてしまったわ」と言いふらしていた。

学内で済むならまだいい方で、今はやりとりを全部SNSで晒されるかと思うとやはり男女を問わず、そもそも得体の知れない他人に「可能性」を感じること自体がものすごくリスキーな行為なのかもしれない。

 

人間にそれ以上可能性を感じてはいけない。